神経発達症(ASD ADHD LD)

神経発達症とは

当院では、神経発達症に関して医師の診断のもと、ハビリテーションスタッフなど多職種が連携することで様々な『医療的選択肢』をご案内しています。

自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つを神経発達症と言います。

自閉スペクトラム症とは

「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」は発達障害(神経発達症)の一つで、対人関係やコミュニケーションが苦手、限定された対象に強いこだわりがある、新しい場所や人など新規場面が苦手、感覚的な刺激に対して過敏であったり鈍感であったりする、反復的な行動や言動がみられるなどといった特徴があります。その本質は【イマジネーションの質的違い】です。

コミュニケーションはお互いが意思疎通をするために、お互いがイマジネーション(想像)しながら進んでいくものです。ASDの人は目の前にあることや言われたことをストレートにそのまま受け止めてしまうことが多いため、字義とおりに物事を解釈し、裏の意味を捉えることや相手が本来意図することを捉えることが苦手です。相手に言われた比喩や嫌味が理解できなかったり、自分の思ったことを悪気なくそのまま口にしてしまったりすることで誤解を受けることがあります。ASDの人にとっては<本音と建て前><お世辞><嘘><皮肉>などは苦手なことですから、実は正直者で本当に信頼できる人たちなのです。

こだわりや興味の限定というのも、イマジネーションがうまく働かないために、予想しないことや予期しないことに柔軟に対応することが苦手なため、決まったことや決まった手順ルーティンワークが心地よいのです。柔軟性には欠けますが、固執性があり、とことんやり抜く力、好きなものに没頭して達成させる強い力を持っています。

自閉スペクトラム症は病気や障害とひとくくりに捉えるより、人間誰もが持っている特性(個々人に特有な性質)が少しだけ強い人、少しだけ偏った人と捉えると理解しやすくなります。

この特性は薬で治すものではなく、一人一人の状態や発達の段階に合わせた適切なかかわりをすること、ご本人や周囲の方が特性を理解し、社会生活への支障を減らしていくことが自閉スペクトラム症の治療の基本です。興奮やパニック、衝動性や自傷、睡眠障害など具体的な症状がある場合には対処療法として薬を処方することもあります。

注意欠如多動性障害(ADHD)とは

ADHD(注意欠如多動性障害)は、不注意、衝動性、多動性といった特徴があります。
ASDは【イマジネーション】の問題によるものですが、ADHDは【コントロール】の問題が原因といえます。気持ちや感情のコントロール、モチベーションのコントロール、注意のコントロール、集中のコントロール、衝動のコントロールが苦手なのです。そのために、先生や保護者から求められていることでも自分に興味のないものには意識を集中させることが苦手で、気が散りやすくなり、同じミスを繰り返したり、忘れ物が多くなります。一方で好きなことや興味あることに関しては過集中になってしまうため、中断したり終えることができず切り替えがうまくできなくなります。

また衝動を抑えることが苦手なので、やりたいと思ったことを我慢ができない、思い立ったらすぐ行動に移してしまう、順番を待つことができない、カッとなると手が出てしまう、落ち着きがなくじっとできないなどの特徴もあります。

人は嬉しいことやご褒美に対して【報酬系】という脳の機能が働き、ドーパミンという快楽を感じる神経伝達物質が放出されます。ADHDの人は報酬系の働き方も異なっているといわれており、「今なら100円あげるけど、明後日には500円あげる。」と言われても、迷わずに100円を選択したり、少し褒められただけでも有頂天になりやすく、一方でその喜びをすぐに忘れやすいという特徴もあります。たばこやお酒、ギャンブルなどの依存症と報酬系の脳機能とは関係があるとも言われています。また、睡眠のメカニズムに異常があることも報告されています。

学習障害(LD)とは

LD(学習障害)は全般的な知能発達に問題はないにもかかわらず、読むこと、書くこと、算数などの計算や概念的理解という学習に関する技能に困難を抱えている状態をいいます。

文章の意味を理解しながら区切って読むことができない、漢字が読めない、文字を読み間違える、拗音(しゃ、しゅ、しょ など)、促音(いっての「っ」など)が読めない、正しく文字を書けない、きれいに文字が書けない、枠の中に書くことが難しい、句読点が書けない、鏡文字など文字を書き間違える、計算がうまくできない、図形やグラフなどが理解できない、計算問題はできるが文章問題ができないなどがあります。

その本質的な原因は、努力不足ではなく、認知機能の問題といわれ、音を捉える音韻認知や、音と文字を結びつけて認知し自動化すること(スムーズに読む、単語のかたまりで読むなど)、目で見たものを立体的空間的にとらえる視認知機能などに問題があると考えられています。

さらに鉛筆などの道具をうまく使えずに筆圧が強すぎたり弱すぎたり、力加減が分からず消しゴムで消すのが難しい、黒板を見た後にノートに目を移すときにスムーズにいかず板書に時間がかかってしまう、丁寧に書かないと気が済まないなど、不器用・目の使い方が悪い・処理能力が低い・こだわりなども学習を妨げる原因になっている場合もあり、どこで、どのように学習につまづいているのか、その原因をしっかり探ることが必要です。

その他の特徴

神経発達症は、下図のような特性をもっています。不器用、感覚の問題、夜尿症や吃音、チック症との関連性もいわれています。また不登校児の60%以上が神経発達症の特性をもっているという報告もあります。

当院の考え方

現代社会において、大人も含め発達に問題がない人はほとんどいません。大人の中でも、「遅刻が多い人」「自分の話ばかりしてしまう人」「よく忘れ物をする人」など、苦手や得意が人それぞれあります。お子さんの発達も同じで、発達のはやさや得意不得意があり、【でこぼこした発達】はどのお子さんにもみられるもので特別なことではありません。

 

『個性なのか』・『障害なのか』の
判断基準は?

神経発達症(ASD、ADHD、LD)が個性であるのか障害であるのかの違いは、個々の子どもたちがもつ特性によって社会生活に支障をきたしているかどうか(社会適応)が判断基準とされます。ただし、社会適応というものは周囲の理解や環境が変われば、変わるものですから絶対的なものではありません。

発達に特徴があるお子さんが、本人が持っている特性にあった社会環境で育つことで個性(特性)が活かされ、他類まれな素晴らしい能力を発揮することも多くあります。

診断と介入について

診断の目的

  • 子どもにレッテルを貼るためではない
  • 教師や保護者が楽になるためではない
  • お子さんの特性~得意・不得意~を客観的に理解すること
  • 保護者が分かりやすく、お子さん本人が生きやすくなるため
  • 必要な支援を適切に選択するため

介入の目的

  • 早期介入による二次障害の予防
  • 環境の悪循環の改善、長期予後の改善
  • 学ぶ機会、育つ機会を逸しない
  • 利用できる支援(教育・療育・手帳など)を適切に使えるように

当院の発達相談外来

発達相談外来の対象者

  • 神経発達症(ASD ADHD LD)発達遅滞
  • チック、不登校、夜尿症、睡眠障害など

外来の役割

  • 診断・治療(投薬・発達相談・療育相談)
  • クリニック内での多職種による発達フォロー(ハビリテーション)
  • 診断書など書類作成
  • 園や学校、療育機関との連携

当院のハビリテーション外来

Step1初診予約

※毎月1日~5日に翌月の初診予約を受け付けております。
▶みくりキッズくりにっく 発達・小児神経外来お申し込みフォームよりお申し込みください。
なお、このお申し込み入力は、ご予約を確定するものではございません。
院内の予約調整会議にて翌月分の予約枠をご案内できる方から順次メールまたはお電話にてご連絡いたします。
※20日までにお電話もメールもなければお問い合わせください。
※迷惑メール設定は必ず解除して下さい。予約枠のご案内をするメール等が届かない場合がございます。
「@micri.jp」のメールを受信できるようにしておいてください。

Step2発達・神経外来

初診(60分)

Step3心理・ST・OT・PT
などの発達評価

(1時間~2時間)

Step4発達外来再診

結果のFB、診断、今後の方針決定、投薬など(30分)

  • 個別指導(心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)
  • 集団指導

当院で実施している発達評価

当院で実施している発達評価

当院で実施する
ハビリテーション内容

心理士

お子さんの気になる様子について、各種質問紙や認知検査などを用いて評価し、お子さんの発達特性や発達段階を把握します。ご家族とお子さんの状況を共有しながら、お子さんの発達特性や発達段階に合わせたトレーニング、もしくは問題解決のための心理療法を実施し、同時に保護者の方々へのアドバイスを行います。
また、ご家庭や学校の先生方への環境調整の仕方などもご提案します。

理学療法士

粗大運動発達について、筋の緊張、呼吸状態、姿勢や動作の分析などから、お子さんの発達状況を探り、ひとりひとりの成長に合わせた支援プログラム及び運動療法を提供します。歩行を獲得しているお子さんには、評価としてシート式下肢加重計を用いて、詳細な歩行動作の解析をさせて頂くこともあります。
またご家族様のお話をお伺いしながら、抱っこ紐やベビーカーなどお子さんの生活用品についてもご相談をお受け致します。必要に応じて補装具外来のご案内もさせて頂きます。

作業療法士

お子さんの日常生活動作、運動面、感覚面(視覚・聴覚・触覚・味覚・臭覚など)、手先の巧緻性、学習面(字がうまく書けない、書くのが遅い)など気になる点について、その原因を探り、ひとりひとりの成長発達に合わせた支援プログラムを提供します。ホームプログラムについてもご提案します。

言語聴覚士

お子さんのことばの発達や食事、コミュニケーション行動等の気になる点についてご相談ください。 必要があれば、各種質問紙や発達検査をもちいて評価をし、専門的な立場からお子さんの特性についてアドバイスし、発達支援プログラムを提供させていただきます。

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